ギターを弾かれるほとんどの方は、早い段階から「弦
高」について迷われるかと思います。
弦高は、ある程度低い方が指先への負担も少なく、比較
的楽に「出音」できるのですが、完璧な調整となると至難の業。
自力調整に不安をお持ちでしたら、実際にショップへ持
ち込み、好みのプレイスタイルを告げて調整してもらうのが最良です。
▼最良ながら、完璧ではない?▼
しかしながら、ショップに持ち込んでも、「それで完
璧」という訳には行かないのも事実です。
その理由は、ギターネックが木で出来ているからです。
ご存じのように、木材は微量の水分を含む事で粘り強度
を保ち、そして日々変化する大気中の湿度と微妙なバランスを保ちながら 排出/吸収を繰り返しているのです。
実際にリペアマンの中には、雨の日はネック調整をしな
い方もいるほど、ショップで「完璧な調整」を施した後でも、天候次第で「微量の反り戻り」は起こり得るのです。
その主な要因は、ネックの調整時にトラスロッドを回し
た場合にあります。
長い時間をかけ、ようやく落ち着いたネックに対して
逆方向に大きな負荷をかける事になるのですから、その後しばらくは「変化した状態に慣らす時間が必用」となり、その過程を経て、ようやく自分で微調整を加
えた「最適なニュートラルポイント」を探る事が可能となる訳です。
※微調整とは弦高程度の事です。設定が噛み合っていないなどの例外もありますが、基本的にはショップで調整されたトラスロッドには触れないでください。すべてのバランスが狂います。
それでも、調整の基本となる「フラット出し」でネック
を整えてくれる「ショップに持ち込むメリット」は大きいです。
※弦の振幅は中央部(12フレット上)が最大となる都合上、わずかに順反りとするのが基本です。
知識や技術に乏しい初心者では不可能な修正作業も、プ
ロなら複数の解決策を提案してくれるはずです。
▼弦高は低いほど良いのか▼
これについては、プレイスタイルに合わせて~というの
が答えになります。
例えば。
a.
弦振動がフレットに接触して起こる多少のビリツキは気にしない。とにかく低弦高を望むタイプ。
b.
生鳴りまでクリアなストリングサウンドを望むタイプ。
大まかには「a」or「b」の選択によって、弦高の調
整は行われることになります。
エレキギターの場合、多少のビリツキでも、実際にアン
プを通せば十分許容範囲になり得ますし、ましてや、常時歪みをかける方などは、かなりのビリツキを許容してセッティングされる方もいらっしゃいます。
▼弦高を上げすぎている場合のデメリットは▼
押弦から出音までの「タイムラグ」につきます。
ともすると、ピッキングと押弦のズレが音づまりとして
表れるなど、こちらも程度の問題を含む事になります。
また、押弦時の指先にかかる張力負荷が大きいことも、
早弾きには不向きな要因となります。
▼逆に、弦高を高くするメリットは▼
とにかく鳴りが良い事と、押弦時に隣接する弦ミュート
を確実に行える点です。
これを利用する事で、ある程度高い弦高セッティングで
も早弾きは可能です。
(過去のビッグネーム・プレイヤーの多くは弦高を高め
にしていたと言われています)
そこ
で!
「a.」or「b.」の中間範囲内で、自分のスタイ
ル、いわゆる「ニュートラルポイント」を探し出す作業が必要となる訳です。
■ギターには、一般に「12フレット基準」というもの
があります。
これは、解放弦の状態で、その中央点となる、12フ
レット上の弦高(フレットと弦との隙間)を測定した、ひとつの基準値です。
管理が徹底されたメーカー製のギターなどは、出荷前の
最終点検で弦高調整に基準を定めて品質を維持しています。
▼プレイスタイルによる一例ですが▼
240R指板でしたら、
12フレット上の1弦:1.4mm前後。+-
0.2mm 推奨=1.5mm
12フレット上の6弦:1.8mm前後。+-
0.2mm 推奨=2mm(1弦⁺0.5mm)
300、350R指板でしたら、
12フレット上の1弦:1.3mm前後。+-
0.2mm
12フレット上の6弦:1.7mm前後。+-
0.2mm
※開放弦高は「ナット」の溝切り深と、ブリッジサドル
の高さ調整+ネックに仕込まれた「トラスロッドの調整」指板のR(湾曲)にも依存します。
▼ナットの適正値を探し出すには▼
ネックがフラットの条件で、開放弦での12フレット弦
高と、1フレットを押弦した状態での12フレット弦高の「差」を少なく調整する必用があります。
※ナット開放弦高の方を微量でも高く設定して下さい。
つまり、ナットの溝切り深の調整が重要になります。
※これを削りすぎると開放弦が使えないほど「ビリツキ
過剰」となりますので、慎重な加工が要求されます。
これらの数値を参考として、個々のプレイスタイルに合
わせた調整を施すのが望ましいです。
さらに低弦高に追い込むには、先に述べたフレットの調
整も必用です。
特に太さのある5、6弦では「弦振動」も大きいため、
より多くの余裕が必用になります。
▼低弦高で問題は?▼
最も多いのは「高域チョーキング時」の「ビリツキ/音
切れ」です。
特にVintageラディアスなど、指板Rがキツイ場
合などは顕著にその傾向が表れてしまいます。
430Rなどの平滑指板
に近いラディアスや、高域側に行くに従って指板Rを大きく平滑に近づけた コンパウンドラディアス指板でしたら
比較的低弦高に持ち込むのも容易ですが、通常指板では、これらの「追い込み作業」は、ある程度の熟練を積んだ方でないと難しいと思います。
諦めて弦高を上げるか、ショップに持ち込むかの選択と
なります。
▼フレット修正の注意点▼
ナットと同様、一度削ってしまった「フレットの高さは
取り戻せない」事を念頭に置く必用があります。
そのためには、隣接フレットとの高低バランスを睨みな
がら、微量を心がけ、何度も弦を張っては音出しを繰り返す根気が必用です。